第569話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㊻

 数メートル上の木の枝にぶら下がっていた緑色の物は、一番低い木の枝から伸びている透明な糸で支えられていた。

「あれを下ろしてみましょう」

 結はそう言うと、一番低い木の枝へと近づいていく。そして何重にも巻かれていた糸と解こうと手を伸ばしたが、

「………!」

 結の手は、枝に届かなかった。

 糸の結び目は枝の下の方にあるが、糸を直接縛っているのではなく、糸の端を結んでおいた細長い小枝を、何重にも巻きついた糸の一番端の糸へとくぐらせて止めていた、という状態だった。

「この糸をほどけば、あの上の物を下ろせるんだよな?」

 結の隣まで来た満が、そう聞いてきた。

「はい」

 結が頷くと、満は「俺なら届きそうだ」と手を伸ばす。

 ギリギリで届いた満の手は、まず右手の人差し指と中指を一番端の糸の中へと入れた。そうして出来た隙間へ、今度は慎重に左手で小枝をくぐらせていく。       

「………!」

 巻きついている糸を外そうとする満を、結は息をのんで見ていた。梅川も、声をかけることなく後ろから満を見ている。

「―あっ!?」

 小枝が一番端の糸をくぐりぬけ、糸の端から外れる。利き手ではない左手で持っていたからか小枝を持ち替えようとした瞬間、小枝をつかみ損ねてしまい、一気に枝に巻きついていた糸がほどけた!

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