第566話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㊸

「…十年前の親睦の会で、私が俊彦さんの親戚にお菓子を持ってきたら、その子から『かわいい華さんからもらいたいー』と、断られてしまったんです」

 結に慰められたあとだったから、梅川は自分の親戚の子に掴みかかって喧嘩になってしまったのだ。

この時結は『お菓子を渡さなければ、ケンカにならなかった』と落ち込んでしまった。

 なお、その親戚の子は、それを知った華から「結にイジワルする子はキライ!」と冷たくされ、親睦の会の間、ずうっと暗い顔をしていたのだった。   

「結さんは君が熱中症になると心配しているんだぞ!?それなのに、君は結さんの心を踏みにじる気なのか!?」

 もはや本人以上に激怒していた梅川を、結は「俊彦さん、落ち着いてください」となだめた。

「受け取る側の気持ちを尊重しない親切は、ただの押し付けになってしまいます。私は気にしていないので、どうか怒るのを止めてください」

 結からの言葉に、梅川は一旦大きく息を吸った。そして深呼吸をしてから、少年から一歩離れる。

「…ごめんなさい。余計な事を言ってしまって」

 梅川の怒りから解放されて安堵していた少年へ、結は頭を下げる。

「いや!結さんが謝る必要なんかない!せっかくの気遣いを受け取らなかったのが悪いんだ!」

 ビシッ!と指さしながら、梅川は結をかばう。

「…受け取るのは自由だと思うけど」

 結が先ほど言った言葉を聞いてなかったみたいな梅川の発言に、満はやや呆れた顔で呟いた。 

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