第564話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㊶

「ラストハッピー賞が盗まれてしまったのですね…」

 満からの説明を聞いた結は、真剣な顔で呟いた。

「ああ、公園で梅川を待っていたら、いきなり水をぶっかけられたんだ。その後、差し出されたタオルで頭を拭いていたら、その間にレジ袋を盗まれたんだ」

 流が、満の説明を補足するように詳しく話す。        

「でもどうしてわざわざタオルを差し出したんだろう。水をかけたのなら、そのまま盗めばいいのに」

 梅川が、首を傾げながら言う。確かに、水をかけただけでも盗むための時間稼ぎはできるはずだ。 

「おそらく、目と手を封じるためでしょう」

 結の言い方に、満だけでなくまだ流に肩を掴まれたままだった少年も「え?」となる。

「…あ!髪や顔が濡れてしまっても、手で拭えばすぐ水をかけた犯人を見る事はできます。だけど、タオルを差し出せは反射的に顔を拭いてしまうので、その間タオルがで周りが見えなくなってしまうのです」

 結の推測に、満達は「なるほど!」と声を出した。

「さらに頭や顔を拭いていたら、手にタオルを持っているので、とっさに他のものを掴むことが出来なくなるんです。もし他のものを掴もうとしたら、一度タオルを離さなければ、それを掴むことは出来ませんから」

 さらなる推測に、満と流と梅川は納得した。わざわざタオルを差し出したのは、確実にレジ袋を盗むための計画的な時間稼ぎだったのだ。

「そのタオルは、どうしました?」

 結からの質問に、流は「慌てて追いかけたので、公園に置いてきてしまった」と答えた。

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