第560話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㊲

「満!?」

 駈け寄って来たのは、同じ年の少年だった。白色のTシャツに裾が少し短いGパンを着た、短い黒髪の少年は息を整えながら、流達の一歩手前で立ち止まる。

「…彼は?」

「オレの友人。満、何でここに?」

 確か満は『コンビニへ寄る』と言っていた。なのに、なぜここへ来たのか流は見当がつかなかった。

「ああ、俺はこの近くのコンビニに寄ったんだ。そこのコンビニでなきゃ買えない物があったから」

 そう説明した満の手には、そのコンビニ限定のお菓子の袋が握られている。どうやら、中身はすでに胃の中らしい。

「食べながら歩いていたら、流が大急ぎで走っていたのが見えたんだ。何かあったのか?と思って来たんだ」

「そうか…」

 自分を心配してきてくれた満に、流は感謝の気持ちがこもった呟きをもらした。

「…あ、僕は梅川俊彦。ハッピーくじでどうしても欲しい景品があったから、風山君に協力してもらっているんだ」

 初めて会う満へ、梅川はそう自己紹介をした。だが、それを聞いた少年の目に一瞬、怒りの感情が宿ったのだ。

「そっちは?」

 成宮家に次ぐ名家の者だと知っても、満は特に気にせず梅川の前に居た少年の事を聞く。

「ぼくは、公園のトイレから出た時にこの人達が何かを探していたのを見て、声をかけただけなんだけど…」

 まだ流が肩を掴んだままだったので、困惑した顔で少年は説明した。

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