第555話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㉜
「ああ!サンキュ!」
そのタオルを受け取り、流は濡れた頭を拭く。
毛先から滴るほどの水をぶっかけられ、着ているTシャツの首回りも張り付くほどのずぶ濡れだったので、乾いたタオルで拭けたのが本当にありがたかった。
「これ、洗濯して返すよ。…あれ?」
ようやく濡れた頭と首回りを拭き終わり、流は目線をベタベタになったタオルから貸してくれた人物へと移動した。が、目の前に誰もいなかったのだ。
「…?」
確かに、タオルを貸してくれた人が居たはずなのに…、と周りを見渡した流は、左側に置いてあったレジ袋が無くなっていたのに気が付いた。
「―ない!?」
慌てて首を左右に動かすと、向こう側へ走っていく人影が見えた。その片手には、大きいレジ袋が握られていたのだ!
「待て!ドロボーっ!!」
盗まれた!と瞬時に理解した流は、大急ぎで立ち上がって走り出した。
町中の歩道を走っていたその人影は、濃い緑色の半袖パーカーを着ていた。
フードを被っていたのは、頭を隠すためだろう。流は体格から、同じ年の男性だと予想していた。
レジ袋を持っているからか、思っていたより走るスピードはそう速くない。これなら追いつける!と流がさらに速度を上げた瞬間、
「うわあっ!?」
突然、顔に何か固くて軽い物が当たった!
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