第554話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㉛

 ガタン、と音がした後、流は自動販売機から麦茶を取り出す。それを右手に持つと、ベンチへ歩いて行った。

 ベンチに座った流は、ラインで梅川へ連絡する。すると、梅川から『少し遅れる』と返事がきたのだ。

「梅川はさらに向こう側のコンビニに行く、って言っていたな」

 今くじの代行で買っている『劇場版・銀河の帝国の王子 緑の星の大冒険』は、売れ切れてもどんどん追加のくじが発売されるほどの人気だ。特にラストハッピー賞は狙っている人が多いらしく、ネットではどこでラストハッピー賞が手に入るのか情報が飛び交っているほどだ。

 雇い主の梅川の叔父は、その情報に詳しいらしく、指定されたコンビニなどに行ってみると必ずラストハッピー賞をもらえることが多い。今回の分を入れて、四回連続でラストハッピー賞を手に入れたのは初めての経験だった。

「これでまた、数千円手に入るかな」

 流が追加のアルバイト料の使い道を、あれこれ想像していた時だった。 

「―うわっ!?」

 突然、流の頭に冷たい水がぶっかけられたのだ!

「なんだあっ!?」

 頭全体が濡れてしまい、慌てて目の周りの水を手で拭おうとしたら、

「これ、使って」

 手に、柔らかい物が触れる感触があった。目を開けてみると白いタオルが差し出されていたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る