第552話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㉙

「すげーな。自分の夢を叶えるなんて」

 さらに三分の一アイスコーヒーを飲みながら、満は呟く。

「ああ、ちゃんと資金を貯めていたんだろうなあ」

 流は一気にアイスコーヒーを飲み干しながら、ふと漏らした。元々空き店舗だったとはいえ、改装して新しい店にするなど、どれだけ資金がいるだろう。

 急に流の半袖の上着のポケットに入っているスマホから、着信音が鳴った。ポケットからスマホを取り出した流は、画面のラインを見ると、素早く返事を返した。

「悪い、急用が入った。オレ、先に行くわ」

 立ち上がった流が、反対側のポケットに入っていたミニ財布から自分のコーヒー代を出した。

「あ、俺も行く。コンビニに寄りたいから」

 流が千円札をテーブルへ置こうとする前に、満は残っていたアイスコーヒーをすぐ飲み干した。そして立ち上がるとズボンのポケットに入れていた三つ折りの財布を取り出す。

 満は財布から千円札を出した。それを見た流は「満も細かいのがないのか?」と聞く。

「ああ、昨日、自動販売機で使ったから」

「じゃあ、ここはオレが立て替える。コーヒーの分の小銭ができたら渡してくれ」

 そう提案すると、流は伝票を持って先にレジへと向かった。

「いいのか!?」

 ここのコーヒー代はそう高くないが、学生から見ればそう安くもない。お互い今月の小遣いをもらったばかりとはいえ、満は流がこちらの分の建て替えを提案したのに戸惑った。

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