第546話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その㉓

 くじの景品を、持ってきたエコバックの中へ丁寧に入れてもらった後、梅川はふわふわした気分で店を出た。

 あの時、自分に元気をくれた結に再び会えた。しかも「かっこよくなった」と褒めてもらった。

 結は眼鏡をかけていた以外、あの時から変わってなかった気がした。礼儀正しく、落ち着いていて、そして周りに寄り添う優しいところも。 

「どうだった?」

 本屋から歩いて約十分の所にある公園の東屋に居た流が、公園の出入り口を通り過ぎた時点で声をかけた。

「バッチリだよ。最後のA賞をゲットしてきた」

 エコバックのフタを開けると、A賞のフィギュアが入っている小さな箱が見えた。

「…おお!」

 欲しかったA賞が、目の前にある。流は釘付けとなったが、

「…他に欲しい人がいたら、渡す約束だもんなあ…」

 自分へ無理やり諦めるように強く声を出した。

「君がむやみに欲しがる人じゃなくて、本当に良かったよ。信用できる」

 真剣な顔で、流をそう評価した。

「あと数分経ったら、本屋へ買いに行ってほしい」

 エコバックのフタを閉じた後、梅川はそう指示を出した。

「えっ!?今すぐ行ったほうがいいんじゃ!?」

 今すぐ行かないと、売り切れてしまうかもしれない。流は焦ったが、

「大丈夫だよ。近くのコンビニでもこのハッピーくじは扱っている。最近新たに仕入れたから、そこへ行く人の方が多いんだ」

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