第539話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その⑯

「…だから欲しいんだけど、金がなくて」

 一緒に盛り上がった事から、流はつい本音をこぼしてしまった。

「分かる!欲しい賞を手に入れたいと思ったら、たくさん引かなきゃ!」

 何度も頷きながら、梅川は両腕を組んで共感した。

「え?梅川家っていくつも会社を持っているんだろ?」

 成宮グループほどではないが、梅川も大企業である。老舗の店が多いので、流のような若者にはあまりなじみがなかったが。

「家が名家だからって、何でも思い通りになるわけじゃないよ。僕は、そんなにお小遣いはもらってないから」

「えっ!?いくら!?」

 驚きのあまり、流はつい失礼な質問をしてしまった。   

「五千円」

「オレと同じじゃん!」

 まさか大企業の息子が庶民である自分と同じ額とは、夢にも思わなかった流だった。

「実は父の会社はそんなに儲かっていないんだ。成宮グループのように若い人向けの商売をあまりしていないから」

 老舗という事で、年配や昔からの常連を中心に商売しているのもあってか、売り上げは成宮グループよりも下だ。社員達に何とか、年に二回ボーナスを渡すのが精一杯らしい。 

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