第538話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その⑮

「ドアの方を見つめていたから、もしかして、と思ったから」

 確かに、流は出入り口のドアに貼ってあるポスターを何度も見ていた。それでハッピーくじに興味がある、と判断されたらしい。

「僕は梅川俊彦。僕もハッピーくじに興味があるんだ」

「…梅川!もしかして梅川家の!?」

 流が大声を出してしまったのは、彼の名字が『梅川』だったからだ。梅川家は、この幸澤市では成宮家の次に偉い名家だからである。

「…まあ、その梅川家かな。もっとも、僕はただの高校生だけど」

 名家の者だから、と、いっさい威張らず、逆に謙遜する梅川を見て、流はつい感心してしまった。

「…ええっと、ハッピーくじに興味があるって言ったよな?」

 自分へ声をかけてきた理由を思い出し、流はそう質問してきた。

「うん、欲しい賞があって、探し回っていたらここまできたんだ」

 そう言いながら梅川は、ドアに貼ってあるハッピーくじの告知ポスターを見る。

「欲しいのって、どれ?」

「A賞のフィギュアかな。僕、公開初日に映画を見たから」

「あ!わかる!」

 流も最近映画を見たので、主人公がカッコよくビームサーベルを構えているフィギュアを欲しがる気持ちが理解できた。    

「最後のシーンで、ラスボスとビームサーベルで戦うところがカッコよかったんだよね!」

「そうそう!あのフィギュアはそのワンシーンを切り取っているみたいで、マジカッコいいんだよな~!」

 梅川が映画の話をすると、流もテンションが上がったように言う。同じ映画を見た同士、急に話が盛り上がっていった。

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