第531話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その⑧
「あっ、お帰り流」
麦茶が入ったコップを片手に持ちながら、台所に居た女性は弟の名を呼んだ。
流より少し背が高い、ポニーテールがよく似合う快活な女性だ。半袖の白いワンピースを着こなしており、お洒落な印象を与えている。
「今日、バイトは?」
「さっき終わったよ。夕方に飲み会があるから」
麦茶を飲んだ後、流の姉はそう答えた。
「いーなー、姉ちゃんはバイトができて」
流は心底羨ましい、と言わんばかりの声を出す。
「高校生の時にバイトができなかったからね。大学が夏休みの今、稼ぎ時だわ」
流の姉である涼子は、今年地元の大学に入った女子大生だ。実家から通学しており、行きたかった大学でキャンパスライフを満喫している。
「なんでうちの親はバイトをさせてくれなんだろ?」
夏休みになる前、流は両親にバイトをさせてくれるように頼んだ。だが、両親は「勉強がおろそかになるから」と許可してくれなかったのだ。
望ヶ丘高校はアルバイトを禁止していない。流がこの高校を選んだのはそれもあった。
「アルバイトばかりしてると、勉強をしなくなる、と思ったからじゃない?」
高校生の頃、何度も訴えても結局高校を卒業するまでさせてくれなかった事を思い出しながら涼子は言った。
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