第530話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その⑦

「くじに何千円も使えるって、大人はいいよなあ」

 茶髪の髪はお洒落に決めており、服装も清潔感があってさりげなく流行を取り入れている。年は十代半ばで、誰もが高校生だと思う年代だ。

 茶色のズボンのポケットから取り出した、薄い二つ折りの財布を開いてみる。中を開けてみると、お札を入れる場所には何も入っていなかった。

「今月もいろいろ使ったからなあ」

 今やっているスマホのゲームへの課金に千円使ったし、友人との付き合いでゲームセンターに入ったり、ファーストフード店で飲み食いした結果、今月はもう千円以下しか残っていなかったのだ。

 友人はしょっちゅう買い食いしないし、ゲームセンターへ入りびたる方ではないので、それらはまだ月に数回ですんでいる。が、それでも一人の時に他に飲み物を買ったり、コンビニでお菓子を買ったりしたらすぐ無くなってしまう。

「ハッピーくじは来月まで引けないよな」

 七百円のくじを一枚引くことすらできない状況に、少年は本屋へ背を向けて歩き出した。

 

「ただいまー」

 少年はドアを開けながら、玄関へ入っていく。

 スニーカーを脱ぐと、それを綺麗にそろえてから家の中へ入っていった。台所まで歩いていくと、冷蔵庫が閉まる音がした。

「あっ!姉ちゃん」

 台所を覗いた少年は、ちょっと驚いた声を出した。

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