第529話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その⑥

「四十代前半の男の人です。黒髪で短く、黒いTシャツと濃い青色のズボンを身に着けていました」

 結が客の外見を話すと、店長は考え込む。

「…似てるかも」

「どうしたんですか?」

 何やらただならぬ雰囲気に、結は何事かと聞いてみる。

「最近、この辺りのハッピーくじのラストハッピー賞が、何者かに買い占められている、って噂が出てきているの」

 誰かがハッピーくじの最後の一枚を引くと当たる、特別な景品であるラストハッピー賞を何回も引いて独り占めしてる、という話が流れている、との事だ。

「その人はラストハッピー賞は引いていません。くじはまだ、十八枚あります」

 柱に貼られている紙に書かれていたくじの枚数を見ながら、結は話す。

「若い男の子だった、という話もあるし、結ちゃん、もし何かおかしいと思ったらすぐ呼んでね」

「はい」

 心配してくれている店長へ、結は頷きながら返事をした。       

     

 結と店長が本屋の中で話をしていた時、一人の少年が本屋の外でため息をついていた。

 店から出てきた男性が、エコバックにいっぱいのハッピーくじの景品を入れていたからだ。ちらっと見たが、A賞のフィギュアまで当てたのが正直羨ましかった。

「いいよな~」

 つい小声で、呟いてしまう。ざっと見たところ、数千円はくじに使ったのだろう。     

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