第528話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その⑤
黒いロングヘアで、白いワンピースが似合う女性だ。ナチュラルメイクが顔立ちの良さをさらに引き立てており、銀色の眼鏡が知的な印象を強めている。
「あ、梓お姉さん…じゃなくて!店長」
ついお客で会った時のように呼んでしまったが、アルバイト中なので慌てて結は訂正した。
「ふふ、いいのよ。アルバイトはどう?」
軽やかな笑みを浮かべ、間違えてしまった結を注意することなく、店長はそう聞いてきた。
「本屋でアルバイトできるのは嬉しいです。それに楽しいですし」
結は小学生の頃からこの本屋でよく雑誌など買っている常連なので、先代の店長の娘である梓とは前からの知り合いだ。小学生の頃は「本屋のお姉さん」と呼んでいたので、今でも「お姉さん」と呼んでしまう。
「よかった。結ちゃんは本が好きだから。それに丁寧に掃除してくれて助かるわ」
結の働きぶりに、店長は満足げな顔になる。褒めてくれた店長へ、結は「恐れ入ります」と頭を下げた。
「そうそう、結ちゃん、ハッピーくじを買いに来たお客さんはいなかった?」
ふと思い出したように、店長は柱に貼ってあった紙を見る。
「はい、先ほど十枚引かれました」
「どんな人だった?」
結が答えると、急に買った客についてやや強めの口調で質問したきた。
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