第526話 流の災難と、内緒のアルバイト!? その③

「ドアに貼ってあった『劇場版・銀河の帝国の王子 緑の星の大冒険』ハッピーくじはまだありますか?」  

 そう声をかけてきたのは四十代前半の男性だ。少し短い黒髪で、どこにでもいるような、普通の顔立ちである。

 黒いTシャツを着ており、一般的な庶民の男性な印象だが、結は微かににじみ出ている良家の出身の雰囲気を感じ取っていた。

「はい、まだ二十八枚あります」

 結は後の柱に貼られていた『ハッピーくじ』の枚数が書かれている大きな紙を見せる。

「A賞はまだ四枚も残っているのか」

 このハッピーくじは、今公開中のアニメ映画のくじで、遠い惑星の大国の王子が、困っている人々を助けるために冒険をする、という内容である。

 A賞は主人公の王子のフィギュアであり、ビームサーベルを構えた凛々しい十代後半のイケメン青年なこともあり、ネット上では大人気なのは結も知っていた。

「ここでは、一人十枚までか」

 その大きな紙に書かれていた枚数制限を見て、男性は呟く。映画は「一週間で興行成績が三十億を突破した」と話題になっているので、ハッピーくじも開始から三日で売り切れ店が続出したくらいだ。

「じゃあ十枚引くよ」

 そう言いながら男性は高級ブランド物の財布から一万円を出した。

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