第522話 番外編・ナツミと酒井 中編
それを見た少女は、慌てて駆け寄る。ちょうど目の前まで転がってきた消しゴムを拾い、その女子生徒まで届けた。
「ありがとう」
丁寧に頭を下げて礼を言った女子生徒に対し、少女は「どういたしまして」と笑顔で答える。
「素敵な笑顔ですね」
女子生徒が言ったこの言葉に、少女は「えっ!?」と驚いた。
「あ!ごめんなさい!私、コンビニでアルバイトしているから、そんな笑顔でお客様を迎えられたらいいなあ、と思っちゃって!」
慌てて謝った女子生徒からの理由に、少女は「なるほど」と呟いた。
「褒めてくれて、ありがとう」
同級生達からの陰口の後もあり、こうして褒めてくれた女子生徒に少女は好感を持った。
「それ、学遊塾の問題集?」
机の上に置いてあった問題集を見て、少女がふと質問してきた。
「うん。でも私が通っている塾はボランティアの人たちが教えてくれる塾なんだ」
それを聞いた少女は「そうなんだ」と気になる顔になった。
「霧島さんが教えてくれて、おかげでもっと勉強できるようになったんだ。…あっ、霧島さんは望ヶ丘高校の生徒で、私がアルバイトしているコンビニの近くの方の学遊塾に通っているんだよ」
女子生徒から出た恩人の名前を聞いた少女は「霧島さんを知っているの!?」と叫んでしまった。
「私も、霧島さんに助けられたんだよ」
つい叫んでしまった後、大声を出してしまった事に頭を下げた少女は、一旦女子生徒と一緒に図書室から出て廊下で話し始めた。
「…そうだったんだ!」
勉強が中断してしまった事より、この少女が自分を助けてくれた恩人を知っていた事の方が気になった女子生徒は、少女が話した理由を知って驚いたのだ。
「私、小学生の時にイジメにあってて、中学からは別の学校に行ったから離れる事が出来たんだけど、高校生になった時、別の子に嫌がらせをしていたのを見て、小学生の時の悔しかった気持ちを思い出したんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます