「霧島さんは、ふだんどんな番組を見ているの？」

　最初にドラマの話題を言い出した女生徒が聞いてきた。

「音楽番組と、旅番組です。それとバラエティーと推理物もよく見ます」

　水筒のお茶を一口飲んだ後、結は答えた。

　その後、華が何か言いたそうだったが、結は視線で制した。アニメをよく見ていると、勝手に言われたくないからだ。

「そ、そういえば、根津さん達が大人しくなったって聞いたけど」

　結の視線による圧力を感じた華は、急にそう話題を変えた。

「…うん、朝からすごく静かだった。みんなも戸惑っていたよ」

　同じクラスである神崎が、思い出しながら説明する。　　

「ひょっとしたら、ついに先生方から厳しく注意されたじゃない？先週、秋野先生が『前から何度も注意していた』って話していたから」

　華がそう言うと、神崎は「…そうかも」と納得する。他の同級生達も「ようやく先生が動いてくれたんだねー」とホッとした顔になった。

　だが結は知っていた。三人組が朝から静かだった、本当の理由を。

（華さんに、根津さん達が水かけ強盗の真似をして私からお金を奪った事がバレなくてよかったです）

　昨日の夕方、三人組が警察によって結から現金を奪った事が明らかになり、その日のうちに学校へ知らされた。　

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