「成績が上がるうえ、被害届を取り下げてくださるのなら…」

　飛騨の父親も、やや乗り気になり始めている。

「本当に、それでいいんですか…？」

　浦の父親も、おどおどしながら、確認してきた。

「ええ、必ずそうしてくださるのなら、被害届は取り下げますよ」

　被害者である結も、父親の考えを肯定するようにはっきりと頷いた。そしてそばで今まで話を聞いていた結の母親も「私も、同じ意見です」と告げる。

「…わかりました」

　根津の父親達は、その提案を受け入れたのだった。　　

　次の日、一年三組の教室の雰囲気は変わっていた。

　三人組が明らかに、おとなしくなっていたのだ。周りに嫌味やトゲのある言葉を言わずに、自席で静かにしていた。

　あまりの変貌ぶりに、同級生達は「悪い物でも食べたんじゃ…！？」と噂したくらいだ。それでも、三人組は反論せずに自席で無言で座っていた。

　その様子に、神崎は逆に不安になった。あの三人組が嫌味などを言わずに、朝から黙っているなんて。

　昼休みになっても、三人組は自席で私語を一切せずに弁当を食べていた。神崎はそんな三人組を横目に見ながら一組の教室へ向かったのだ。

「ねえ、昨日のドラマ見た！？」

　一組の教室で、華の向かい側に座っていた女生徒が卵焼きを食べながら聞いてきた。

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