　ちなみに、結を殴ってしまった男子生徒と、その怪我をしていた乱暴者の同級生は、甥と伯父の関係だった。甥の家族に起こった出来事を聞き、成宮グループの社長がかつての嫌がらせをしていた同級生だと知った瞬間、驚きのあまりその場でがくがく震え出したのだ。

　甥家族への制裁は撤回されたが、もし小学校時代に嫌がらせをしていた事でまだ恨んでいたら、自分だけでなく再び甥家族への制裁が実行される。

　自分のせいで、もしそうなったら…。あまりの恐怖に考えることすらできなくなってしまった。　

「弟は自覚がなかったとはいえ、結を利用して子供時代の恨みを晴らそうとしたのです。ですが、それは単なる八つ当たりです。結や周りの気持ちを無視し、強引に実行した事は、今でも酷い行いだと私は思っています」　

　結の父からの説明に、三人組の親は完全に血の気が引いていた。この幸澤市では、成宮グループを敵に回すという事は『平穏な生活を送れなくなる』という意味だ。

「…ほ、本当に申し訳ありません！！」　

　根津の父親が、再び娘の頭を押さえつけた。もし、娘と友人達が「成宮グループの社長の姪を襲ってお金を奪い取った」という話が本当なら、会社をクビになってしまうだけでは済まなくなる。

「いえ、私達は先ほど話したような、制裁を加える気などありません。娘が話したのは、成宮グループ一員だからと言って、常にいい思いをしているとは限らない事を分かってほしいからです」

　父親の話を肯定するように、結は頷いた。結の目には、涙が溜まっていたのだ。

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