第352話 謎の美少女と、すぐ瘦せるサプリ!? その58

「…霧島さん、ありがとう」

 目から涙をぼろぼろとこぼしながら、神崎は礼を言った。

 もし結達がいなかったら、無理やり多額のケーキの代金を支払う事になっていた。そう考えると、結達が救世主に見えたのだ。

「まず、一個食べよう。ケーキに罪はないから」

 テーブルに座った結達は、それぞれ好きなケーキを自分の皿に取って食べ始めた。

「美味しい!」   

「うん、本当に美味しいね!」

 チョコケーキの端をを食べた杉村と、モンブランを一口食べた竹町の顔が綻ぶ。結も三角側の端をフォークで小さく切ったショートケーキを一口食べた後、口角が緩んだ。

「美味しいです」

 結にとって、華以外の同年代の女子と一緒に喫茶店で飲食するのは、これが初めてだ。華と一緒に他の喫茶店などに入ったことはあるが、華抜きで他の人と一緒に入ったのは、今日が本当に初めてだった。

 神崎はケーキを食べずに、紅茶を何度か一口ずつ飲んでいた。根津達に無理やり三個もケーキを食べさせられていたので、もうお腹いっぱいだったのだ。

 結達が半分ほど食べ終えた時、さっきのウエイトレスが入り口へと歩いて行った。結はそのウエイトレスを見た瞬間、パウダールームで三人組に話しかけていた、『ナツミ』と名乗った美少女だと気づいたのだ。   

(…根津さん達に痩せるサプリを勧めていましたが、アルバイト中にそんな事をしても大丈夫でしょうか?)

 わざわざ告げ口をする気はなかった結は、ついナツミの事が少し気になってしまった。 

「おまたせ!」

 明るい声と共に、ほとんどの客が帰っていったお店の中へ華が入ってきた。

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