第302話 謎の美少女と、すぐ瘦せるサプリ!? その⑧

 結がダイエットに関する本を選び、十人いたすべての志望者へ配り終わったのは、昼休みの予鈴がなる前だった。

 最後の一人がご機嫌で片手を振りながら「ありがとー!」と言いながら去っていったのを見送ると、結はやや疲れた顔で図書室を出た。

(…いい結果が出るといいですが)

 ダイエットは長期戦で挑んだ方がいい。結は何回もこの事を口にしていた。

 だが、全員すぐに良い結果が出る事を望んでいるようだった。それこそ、神崎よりも早く痩せたい、と思っているのがそれぞれの言葉や表情、態度などからにじみ出ていたのだ。

 何となく、結の胸は不安が渦巻いていた。もしダイエットが成功しなかったら、その志望者達は結に逆恨みをして酷い言葉を浴びせるのでは、と思ってしまうくらいに。

 神崎は当時気弱な態度だったからか、絶対にそんな事はしない、と思えたので結は気兼ねなく本を選べた。しかし、今日会った十人の志望者達は全員、言いたい事は遠慮なくズバズバ言い切るタイプだ。いくら冷静な結でも、一斉にいきなりきつい言葉を浴びせられたら怯んでしまう。

(…その時に、考えましょう)

 心の中でそう自己完結した結は、早歩きで教室へと向かったのだった。

 

「霧島さん!」

 一年一組の教室の近くまで来た時、三組の教室の前で立っていた神崎から声をかけられた。

「神崎さん」

「…ごめんなさい。みんなを止めることができなくて…」

「いえ、気になさらないでください。あの場合、すぐに案内したほうがいいと、私が判断しましたので」

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