第293話 成績を上げる意外な方法 その144

「そうか。結、話してくれてありがとう」

「はい」

「これからも、何かあったら話してくれ」

「うん」

 華とは違う自分を温かく見守ってくれている父親の言葉に、結は軽く頷いた。


 

 数日後、結は学遊塾の近くのコンビニに向かっていた。

 家へ帰る前に寄ろうとしたのは、さっき母から急遽お使いを頼まれたからからだ。ラインで買う物を確認した結は、スマホをバッグの中にしまうと、コンビニの中へと入っていた。

 頼まれた品物を手に取ると、レジへ向かおうとする。レジへと顔を向けた瞬間、結の目に思わぬ人物が映ったのだ。

(あれは…!)

 レジの店員が、一人の同じ年の女の子と話をしていた。他に客がいなかったので、店員の子もすっかり話し込んでいたのだ。

「京川さん、酒井さん」

「あっ!?霧島さん!」

 結に声をかけられ、二人は同時に振り向いた。コンビニの店員姿の酒井と、パーカーとロングスカートの京川の近くへと、結は歩いてくる。 

「ご、ごめんなさい!つい話し込んじゃって!」

 コンビニ店員としての仕事をおろそかにしてしまった酒井は、つい客としてやってきた結へ謝った。

「いえいえ、他にお客さんはいませんので」

 酒井とはあの日以来だが、前よりだいぶ明るい顔になっている。京川も、顔色がとても良くなっていた。

「霧島さん!お父さんへのパワハラが認められたんだよ!!その人達は、別の支店へ左遷させられたって!」

 目の前で立ち止まった結へ、京川はすぐに伝えたい!という顔で言い出した。

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