第294話 成績を上げる意外な方法 その145

「そうですか、良かったですね」

「しかも、任せられた仕事を成功させて、成宮グループとの契約を継続させた、って!お父さんの頑張りが会社から認められた、って!」

 昨日の夜、嬉し涙を滲ませながら話してきた父の顔を思い出しながら、京川はさらに声を弾ませる。

「霧島さんのお父さんのおかげだよ!本当にありがとう!!」   

「いえ、京川さんのお父さんが頑張ったからです。父もそう言うと思いますよ」

 高学歴の呪縛から解放された京川の父親は、前と同じ真面目でかつ真摯な姿勢で任された仕事に取り組んだ。その結果、仕事は成功し、その人柄も認められた京川の父親は、成宮グループからも高く評価されたのだ。

 ちなみに、京川がこのコンビニに来ていたのは、先ほどまで一緒に図書館で勉強していたからだ。まだ一緒にいろいろと話をしたかったから、京川がここまでついて来た、というわけだ。

「…霧島さんに出会ってなかったら、私達ずうっと苦しんでいた」

「…うん。ずっと脅されて、お金を払わされていた。そして今、霧島さんがあの塾を紹介してくれたおかげで、私は勉強ができる」 

 もし結に出会わなかったら、家族も辛い毎日を過ごしていただろう。そして結のおかげで、みんな幸せな日々を送れているのだ。

「霧島さん、本当にありがとう!」

「あなたのおかげで、私達は苦しい毎日から解放されたよ!」

 同時に頭を下げて感謝の言葉を述べる京川と酒井へ、結は「私は話を聞いただけです」と答えた。

「ううん、霧島さんが偏見なしで話を聞いてくれたから、私達は正直に言えたんだよ」

「霧島さん、私達を助けてくれて、ありがとう!」

 明るく笑った顔を見せた酒井と京川を見て、結は「どういたしまして」と笑顔で返したのだった。

 

 

 

成績を上げる意外な方法 ―完―   

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