第291話 成績を上げる意外な方法 その142

「…成宮さんにも、そんなところがあったんだ」

 今まで完璧な人間だと思っていた同級生の一人が、少し目を丸くしていた。

「でも、なんかホッとするよね」

「うん、何だか親しみが湧いた、って感じ」

 欠点があったから、かえって華に親しみやすくなった。高嶺の花、思ってしまうほどの遠い存在だった華が、少し近づいたような気がしたのだ。

「もう、根室さんを咎めるのは止めてください。華さんは、根室さんに対してそんな事は望んでいません」

 華がようやく納得したのを見て、結は根室へ抗議していた男子達へそう言った。

「…なっ!?」

 突然、結にまで止められた男子達は驚いた声を出す。

「根室さんは、華さんの行為を見かねて意見を言っただけです。そして、その意見は決して間違っていません」      

 結の強い眼差しに、男子達は反論できずにいた。さらにすぐ近くで、満と流も視線で牽制していたのもあったが。

「…私のため、と思うならやめて。根室さんは貴方達に責められる事は言っていないわ…」

 自席から立ち上がった華が、弱弱しい声で男子達を止めた。まだ華の顔が曇っていたのを見て、男子達は根室の机から離れて行ったのだ。

「霧島さん達、礼を言うわ」

 口の端を上げながら、根室は結達へそう述べた。

「どういたしまして」

 結が淡く微笑みながらそう返すと、少し離れた場所に居た満と流も「ああ」と短く答える。  

 華は根室へ何か言おうとしたが、間髪入れずに根室が強い視線で止めさせた。そして何も言えなくなった華から、黒板へと視線をずらしたのだ。

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