第290話 成績を上げる意外な方法 その141
「ですが華さん、そんな感情を持つことは悪い事ではないですよ」
まだショックを受けている華へ、結は静かに語り掛けた。
「私も華さんの事を羨んだり、イジメてきた人達を許せなかった事がありましたから。そんな感情を持ってしまった場合、行動する前に、なぜそう思うのか何度もじっくり考えてみてください」
結は、華が自分の事を見下していたのについて、責めたりしなかった。そして怒ってもおらず、華の中にあった自分勝手な感情を静かに受け止めていたのだ。
「お洒落に興味がない私が受け入れないのなら、無理に受け入れなくてもいいです。ただ、強制はしないでください。無理やり押し付けようとするから、私も受け入れるのが難しくなってしまうんです」
真っすぐな目でそう意見する結に対し、華は少し顔を上げる。だが、まだどこか心あらず、という感じだった。
「人間はいいところも悪いところもあります。そして、相手の事を考えていない善意は、相手を傷つける行為になってしまいます」
自分にも言い聞かせるように、結はそう話す。善意ある行動が、独りよがりになっていないか、気を付けるために。
「華さんはご自分の醜い感情に気づきましたが、それはさらなる成長ができるきっかけになると思いますよ。成宮家として、相応しい人間になるための」
最後の一文が、華の心に響いた。醜い感情があるからって駄目な人間なんだ、ではなく、それに気づいたからこそこれからもっと良い人間になる事ができる、と。
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