第289話 成績を上げる意外な方法 その140

「華さん」

 再び落ち込んでしまった華へ、結は少ししゃがんで華の目を見た。

「華さんが落ち込んだのは、自分の心の中に良くない感情があった事に気づいたからではないですか?」

「ええっ…!?」

 予想外な言葉に、周りは驚く。

「成宮家は代々、世のため人のために行動するように言われています。そのためには、日頃から周りの事を考え、人助けをするのが当たり前、という考えを維持するように言われています」       

 親戚なので、結も成宮家の家訓は知っていた。もっとも、結達一家は家訓に関係なく、困っている人がいたら出来る範囲で助ける、のは当たり前なのだが。

「だけど私に対しては、私の意見を聞く前に華さんが勝手に決めて行動をしてしまいました。それは自分の意見を無理やり押し付けて、相手を言いなりにしようとする、良くない行為なんです」

 結からの言葉に、華は何も言わない。それでも結はさらに続けた。

「華さんは『自分は良い心を持っています』と自負しています。だけど私への一部の行為が悪い事だ、と指摘されたことで『悪い事をしてしまった』自分にショックを受けたんです。良い心を持っているから、悪い事をしてしまった。そして私のため、と言いながら心のどこかで私を『ダサい』と思っていた自分にショックを受けているんです」

 良い心を持っているから、悪い感情を持っていた自分に嫌悪感を持つ。華が落ち込んでいたのは、それが原因だったのだ。

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