第283話 成績を上げる意外な方法 その134
「…霧島、えらい目に遭っていたんだな」
聞き耳を立てていた流が、額に汗を一筋垂らしながら言った。
「…ああ、確かにトラウマになるよな」
同じく自席で聞き耳を立てながら座っていた満が、隣で中腰で居た流へ同感する。
「…成宮は、昔から霧島に対して暴走していたんだな」
この時満は、少し前に勝手に結の秘密を話し始めて「結と仲良くしてほしい」と言ってきた華の行動を思い出していた。
「成宮さんは酷い事はしないし、逆に皆のためになる事をしている、ってイメージがあるけど、今『善意の押し付け』って言葉が浮かんだぜ…」
流の言葉に、満は「確かに」と頷く。どんなにいい事でも、自分よがりな行為はかえって迷惑になってしまうのだ。
「…もしかして、成宮が落ち込んだのは、根室に指摘されたからじゃないか?」
少し考えていた満は、ふとそう推測した。
「指摘って、霧島の外見を認めていない、ってことか?」
「それもあるが、霧島が根室の言っている事を肯定しただろ?成宮は、霧島のため、と言っておきながら、自分が思った通りの恰好をさせないと気が済まないんじゃ、と言われたようなもんだ」
物怖じしない根室によって、華は自分のエゴを言い当てられてしまったのだ。今まで、自分自身も気づいていなかった、相手の事を一切考えていない、という良くない心を。
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