第281話 成績を上げる意外な方法 その132

 ドレスを返し、メイクを落とした後でも、結は華へ何も言わなかった。華は上機嫌で「これで明日から結も人気者になるわよ!」と言っていたが、結にしてみれば逆に悪い印象を与えてしまったのだ。

 どうやら華は、誕生会をきっかけに結も自分と同じ人気者にしようとお洒落な恰好をさせたようだが、プロのスタイリスト達へ自分の好みの恰好やメイクするようにゴリ押しさせたため、かえって逆効果になってしまった事に気づいてないようだ。    

 

 家に帰った結は、ひたすら落ち込んでいた。華に悪気が本当になかった、と分かっているからなおさらだ。

 次の日はまだ休みだったが、その日が過ぎても学校へ行くのが凄く憂鬱になる。もはや自力では立ち直れないくらいだった。


「…それ、本当!?」

 ここまでの結の話を聞いた同級生達は『信じられない!』という反応だった。華は気配りができ、人が嫌がる事は決してしない。だから『結が似合わない服装をさせられた』という話は衝撃だった。

「はい。華さんはその時本気で『私に似合う』と思って着せたのです。ですが、ドレスを着せた事に満足したことから、肝心の私の気持ちに全然気づいていませんでした」

 その後、結が立ち直るきっかけを作ったのは、結の両親だった。事情を知った両親はすぐいろんな衣装が着られる写真館へ予約を入れると、結を誘ってその写真館に行ったのだ。

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