第280話 成績を上げる意外な方法 その131

「霧島さん、なんでせっかく成宮さんが提案したのに、お洒落の話を断ったの?」

 華を心配している友人達とは別の、同級生達の女子が結の席までやってきた。

 わざわざ結のところまで聞きに来たのは、華へいいところを見せたいからだろう。なぜ結が華からの申し出を断ったのかを聞き出せば、華は元気になるはずだ。

「…小学生の時に、苦い思い出があるからです」

 それを察したのか、同級生達の顔を見ながら結は口を開く。少し離れた自席で座っていた満と、まだ隣で立っていた流もつい、聞き耳を立ててしまった。

「小学生の頃、華さんの誕生会で突然、華さんから『一緒にお洒落なドレスを着よう!』と誘われ、私が断る間もなくお揃いのフリルがいっぱいついたドレスを着せられ、メイクまでさせられました」

 誕生会の主役は華なのだが、華は急に結へ同じお洒落な恰好をさせたのだ。結自身は、そんな気など一切ないのに。

 自信満々でドレスを着こなす華に比べ、結はどこか浮いていた。メイクも整った華やかな顔立ちの華の魅力をさらに引き出していたが、華とは違う顔立ちの結には派手でミスマッチになったしまったのだ。 

 華の手前、招待された友人達は結も無理やり褒めていたが、誕生会が終わった後、華がいない場所で結への酷評が口々から出た。   

 結も、全然似合っていないドレスを着せられたうえに、合わないメイクをさせられた。さらに『華の誕生会を邪魔するためにわざとそんな恰好をしてきたのか?』と陰口まで言われ、ショックで泣きそうになったのだ。

   

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