第279話 成績を上げる意外な方法 その130

 五時限目が終わった休み時間、華はどこか落ち込んでいたようだ。

 それに気づいた友人達が、早速華の傍までやって来た。華を元気づけようといろいろ話しかけてくる。

 一方で、別の同級生達が根室の方へとやって来た。その顔には怒りが浮かんでいる。 

「根室!お前のせいで成宮さんが落ち込んでいるんだぞ!」

 一人の男子生徒が、怒りの声で抗議をした。両側にいる同級生達も、同意するように頷く。

「成宮さんは、自分の思い通りにならかったから勝手に落ち込んでいるだけ。私へ文句を言うのなら、貴方たちも成宮さんを元気づければ?」

 見当違いな抗議など聞くつもりはない、という態度で根室は受け流す。抗議をした男子生徒はそれで頭に血が上ったのか、根室の机へ強く拳を振り下ろした。

 ドン!という音が教室に響く。それでも根室はひるむことなく、男子生徒達へ顔を向けずに黒板の方へ顔を向けていた。

「やめろ!そんな事をしても、成宮のためにならないぞ!」

 見かねた満が、少し離れた自席から立ち上がって注意する。隣で立っていた流も、「満の言う通りだ!」と同意した。

 満の一喝が効いたのか、男子生徒達はそれ以上手を出さなかった。満と流が視線で牽制しているのに気づき、その場でややたじろいでいる。

 それに気づいた根室は、口角を少し上げると満達へ軽く頭を下げた。

「…ええっ!?」

 男子学生達は、いつも不満そうな顔をしている根室が笑って頭を下げた光景に、怒りが吹っ飛ぶほど驚いたのだ。

「…根室が笑った顔、初めて見た」

 小声で、流が呟く。

「ああ。まあ、これであいつらも落ち着くだろ」

 華を落ち込ませた怒りはまだあるだろうけど、もう手を出さないだろう、と満は確信した。  

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