　しかし、そのメイクアップアーティストは、真剣に叱ってくれた師匠の言葉がきっかけで己の行いを反省したのだ。そして失ってしまった信用を取り戻すため、まず周りに今までの行いを謝罪した。

　だが、それでも周りからの態度は元に戻らなかった。それで、行動で示そうと一からやり直した。

　どんな小さな仕事でも真剣にお客の心に寄り添い、誠実に対応し続けた結果、数年後に再びトップの座に返り咲いたのだ。

　今では、周りへの感謝を忘れずに、謙虚な態度で仕事をしている。それは、動画からでも感じられた。

「…こんな事があったなんて」

　現在の華やかな活躍の前に、こんなどん底な状況になっていたとは…。動画サイトのコメント欄で大絶賛されていたの思い出した作高は、動揺していた。　　

　作高の場合、親と教師達から説教と厳しい罰を受けた。それでも、作高は反省せずに、霧島結へ八つ当たりをしたのだ。

　しかし霧島結はそれを受け止めると、作高へ怒るどころか逆にアドバイスをしたのだ。過去に抱えていた黒い感情までさらけ出し、作高へこれからどうすればいいのか冷静に話した。

　再び注目されるには、自分の好きな物を極めてみる。それが作高の心を動かしたのだ。

「………」

　本の中の、酷い事を言った人達へ真摯に謝罪する場面を読んでようやく作高は気づいたのだ。京川と酒井へ酷い振る舞いをしていたんだ、と。

『過ちを認め、向き合い、これからどうすればいいのか考えないと、美しいメイクはできない』

　さらに読み進めたページに書かれていたこの文章は、作高を反省させるきっかけとなった。

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