第275話 成績を上げる意外な方法 その126
家に帰った作高は、自分の部屋に入ると図書室で借りた本を机の上に広げた。
五冊の本は、全部メイク関係の本だ。まさか本当に、学校の勉強とは無縁な本が多くあったとは思ってもいなかったのだ。
望ヶ丘高校は、勉強に全く関係がない本も学校で気軽に読める。そんな噂があるくらいに図書室の本は充実していたのだ。
私服に着替えた後、自室の机の椅子に座ると、電気スタンドを点けてその内の一冊を読み始めたのだ。
その本は、有名なメイクアップアーティストの半生を赤裸々に書いた自伝だ。作高に取って憧れな大人の女性なので、どうやって先週の動画サイトで数十万回も再生されたメイクの腕前を身に着けたのか、とても興味があった。
「…!?」
真ん中まで読み始めた頃、作高の手が止まった。プロになって、一度頂点を極めた後のエピソードが衝撃だったからだ。
それから周りへ傲慢な態度をとるようになってしまい、お客に対して要望を無視したメイクをするようになってしまった。
それが口コミであっという間に広がってしまい、次第に周りから誰も居なくなってしまったのだ。
その状況が、今の作高に少し似ていた。メイクの腕を褒めてくれた同級生達が、メイクを必要としない成宮華の華やかな美貌を見てから、まったく褒めてくれなくなったからだ。
さらに『京川へのイジリが酷い』と非難され、悪い事をしていた別の高校のコンビニ店員を脅したのがクラス中に知れ渡った。
今、作高の周りには誰も居ない。だからその時のメイクアップアーティストの状況に感情移入してしまった。
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