第272話 成績を上げる意外な方法 その123

「俺らは霧島さんに助けられたんだな」

 お茶を一息で飲むと、三村はそう言いながら湯呑を置いた。

「ああ、霧島さんからの恩は、いつか自分達の手で返したいな」

 満の父親が、そう呟く。三村も、同意するように頷いた。

 

「お父さんが、今日退院したんだよ!」

 学遊塾の近くのコンビニのレジの前で、結は吉報を教えられた。

「そうですか!おめでとうございます!」

 コンビニの制服を着て、レジを任されていた酒井は結からの祝いの言葉に「ありがとう!」と笑顔になった。   

「まだしばらくは自宅療養だけど、元気になったら在宅ワークで仕事を再開していく、って!」

 そう語る酒井の顔は、前より明るくなっていた。結がレジの上に置いていた消しゴムを手に取ると、慣れた手つきで会計していく。

「本当に霧島さんのおかげだよ。作高さんからもう脅されなくなったし」

「いえ、私は皆さんから話を聞いただけです。酒井さんが話してくれたから、事件の解決につながったのです」

 塾用の鞄から財布を出すと、結は消しゴムのお金を払う。酒井をそれを受け取ると、レジを操作してレシートを結へ手渡した。

「でも、霧島さんが一方的に私を責めなかったから、私は話せたの。それどころか、力になってくれたから…」

 レジの上に置かれていた消しゴムを結が手に取った時、酒井は感謝の気持ちを込めてそう言った。

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