第266話 成績を上げる意外な方法 その117

「成宮、霧島が凄いのはもう分かっている。だからお前は余計な事をするな」

 沈黙を破ったのは、満だった。華の近くまで来ていた満は、そう言って諫めたのだ。

「…う、うん」

 満まで言ってきたのが効いたのか、華は大人しくなった。それを見て、結は安堵したのだった。

「これに懲りて、余計な事はしない事ね。身内で、優しいからって好き勝手に振舞っていいわけじゃないのよ」   

 そう言った後、根室は自席へ戻る。予鈴が鳴ったので、結だけでなく華達も自席へと向かったのだった。

 

 

「ただいまー」

 学校が終わり、真っすぐ帰ってきた満は自宅の玄関を開けた。

「おかえりー」と、居間から母親の声がする。スニーカーを脱いで玄関に並べると、廊下を歩いて居間を横切ろうとした。

「おお!満ちゃんじゃないか!大きくなったな!」

 突然かけられた声に、満は立ち止まった。振り向くと、両親の向かい側に父親と同い年の中年の男性が座っていたのだ。

「三村のおじさん!?」

 その男性は、満の家の近くにあった雑貨屋の店主だった。小学生の頃、満はよくお菓子や雑誌を買いに来ていたのだ。

「もう高校生かあ!望ヶ丘の制服似合ってるなあ!」

 そう言いながら、横に置いてあった小さい男物のバックの口を開く。そこから、白い封筒を取り出すと、ゆっくり立って満へと差し出したのだ。

「遅くなったが、卒業と、入学祝いだ!自由に使ってくれ!」    

「あ、ありがとうございます!」

 思わぬ贈り物に、満は驚きながら礼を言った。

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