第265話 成績を上げる意外な方法 その116
「貴女と同じでないとダメ、と思っていた霧島さんの気持ちを考えたことある?貴女とは違う、と認められたから、ようやく霧島さんは劣等感から解放されたのに」
根室が言った事は、結が小学生の頃に思っていたのとほぼ同じだった。華のように美人で明るくて運動も出来なければダメ、と結は落ち込んでいた時があったのだ。
勉強ができる事で、結はようやく華と比べられても受け流せるようになった。華も成績はいいが、結は学校の勉強以外の知識を多く持っているから。
「それに霧島さんが頭いいのは、周りを見返すためじゃないでしょ?周りに何を言われても、自分は自分だ、と黒い感情に飲み込まれないようにするため、よね?」
自分の心が満たされれば、周りに対して不満を持たなくてすむ。アニメや漫画を楽しむことで、結はストレスを解消していったのだ。
「根室さんの言う通りです。私が勉強をするのは周りを見返すためではありません。自分に自信を持つことで、華さんを羨む気持ちに負けないようにするためです」
学遊塾での経験で、結は自信を持てるようになった。今では、華がこうして隣に居て、周りがいろいろ行ってきても、結の心に黒い感情は出てこない。
ようやく『華さんは華さん、私は私』と自然に思えるのだ。同じクラスになって、一緒にお昼を食べても、いつも通り冷静で居られる。
「…結」
結からの言葉に、華のテンションは一気に下がった。一人で勝手に盛り上がっていたところに、当の本人から窘められた事で落ち着いたみたいだった。
「お嬢様だからって、何でも思い通りになるとは思わないことね。人の気持ちは、強引に変えることは出来ないのよ」
根室からの正論に、華は何も言えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます