第261話 成績を上げる意外な方法 その112
結が教室へ近づく前に、慌てて一足先に教室へ戻ってきた生徒がいた。
その生徒は不自然にならないように自席へ座り、後から来たもう一人の生徒はその生徒の前の方で中腰で話しかけていく。
「…本当にビックリしたな。まさか作高を遣り込めるとは…」
息を整えながら、流は言った。予想外すぎる展開にまだ驚いている、という顔だ。
「…ああ!作高が霧島に突っかかってきた時は『やばい!』と思ったけど」
作高が結を呼び止める声は、一組の教室にも聞こえてきた。それで満と流は慌てて教室から出てきたのだ。
教室の入り口の前で止まっていたのは、作高の剣幕が凄かったからだ。下手に刺激したら、すぐに結へ手を出しかねないくらいに。
だが結は冷静な態度で作高へ問いかけていき、最終的には作高を逆恨みから解放したのだ。しかも怒鳴りつけるのではなく、自分の過去の経験を話し、落ち着いたところでアドバイスをする、という方法で。
「…でも意外だったぜ。霧島が成宮さんを羨んでいたなんて」
「身近に居たから、今まで色々言われていたんだろうな。でも、霧島はそれを成宮にぶつけずに他の方法で乗り切ったんだ」
流は、いつも冷静な結が華を羨んでいたと初めて知った。華のサポートをする事が多いので、まさか過去の話とはいえ、そう思っていたとは考えもしなかったのだ。
満は結の過去の話を聞いた時、結の葛藤などが伝わってきた気がした。そして結はそれを華とかにぶつけずに、好きな物を見つけて夢中になることで、成宮への複雑な気持ちを昇華していったのだ、と思ったのだ。
「…霧島は凄いよ。やっぱり」
「…ああ」
自然に口から出た満の賞賛に、流は同じ気持ちで首を縦に振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます