第257話 成績を上げる意外な方法 その108
結からの答えは、予想外だった。いつも冷静でかつ、華に対して意地悪な態度をとっていなかったから、てっきり「ない」と答えるものだと。
「小学生の頃、何度も華さんと比べられました。引き立て役だ、と言われ続けましたし、陰口も言われました」
同級生達の誕生日に、華と同じように全員へ豪華なプレゼントをしなかっただけで陰口を言われた。
目立つのが嫌いだが、学芸会の時に華が主役を演じた後、わざわざ結を馬鹿にしてくる同級生もいた。
そのたびに華がかばうのだが、それすら「華は優しいお嬢様だ」という賞賛しか出なかった。根が真面目なのと、親に心配をかけたくなかったから毎日我慢して学校へ通っていたのだ。
「華さんは悪くない、と思っていますが、一方で華さんに対して黒い感情を抱き続けていました。だから中学の間、私は華さんと一旦距離を取ったんです」
華は撫子女学院の中等部へ進学したが、結は公立の中学校を選んだ。親戚付き合いも必要最低限にして、自分の心を守るためにいろいろな方法を試したのだ。
「本をたくさん読んで、体験学習もして、自分の好きな事もし続けました。その一つが、勉強だったんです」
学遊塾に通った事で、結は学校以外の居場所が出来た。ここでは華と比べられないし、誰もわざわざ比べて比較なんてしない。楽しく勉強できたから、結は勉強に自信を持てたのだ。
「そして私の家族は、私と華さんを比べる事は一切ありませんでした。華さんと比べてダメだ、と思っていた私を、いつも温かく見守ってくれたんです」
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