第255話 成績を上げる意外な方法 その106

 いつも問題集を広げていた京川が、今日の朝から問題集を出さなかった。それどころか勉強を一切しなかったとなれば、同級生達が気づいて騒ぎになる。

 さらに作高が停学になったので、ますます二組は大騒ぎとなったのだ。実際、京川は休み時間に何度も急に勉強しなくなった理由を聞かれた。

 それに対し、京川は「昨日、親が先生達に説得されて、無理に勉強させて体調を崩した方がかえってよくない、とようやく分かってくれた」と話した。ここでも、結の両親の事は伏せたのだ。

 結の両親も「親として当然の事をしただけです」と言っていたのと、もし結の両親の事を話したら結が学校で質問攻めになって困ってしまう、と判断したため、京川は決して結の父親が説得してくれた事は言わなかった。

 なお、学校側には昨日の夜に、作高の両親が担任の夏風先生へ電話で話した。その時に結の両親にも話をして『今回は学校側が京川の両親を説得した』という事にしたのだった。 

 京川が何とか同級生達と話をしているところを見届けた結は、声をかけることなくその場から離れて行った。


「待ちなさいよ!」

 数歩歩いたところで、結を呼び止める声が廊下に響いた。

「作高さん」

 振り向いた結は、冷静な顔でその声を出した女生徒の名を呼ぶ。そんな結の態度が気に入らなかったのか、作高は逆ギレした顔で怒鳴ってきた。

「あんたのせいで、何もかも滅茶苦茶よ!周りからも相手にされなくなったし、どうしてくれるのよ!?」

 結は、作高が言いたい事はだいたい分かっていた。結が関わったせいで、作高は周りから孤立してしまったのだ、と。

「今まではみんなメイクを褒めてくれたのに、成宮華のせいで『厚化粧だ』と馬鹿にされるし!京川をいじった事をまるでイジメだと言われるし!みんなアンタのせいよ!!」

 作高の言い分は、逆恨みと八つ当たりだ。今こんな惨めな状況になったのは、結のせいだと喚き散らしているのだ。 

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