第254話 成績を上げる意外な方法 その105

「これで京川さんは、もう苦しまなくてすむね」

 休み時間に勉強ではなく、同級生達と話が出来るようになった京川を見て鳥山は呟いた。

「うん、作高さんも大人しくなったし。…これも霧島さんのおかげかしら?」

「きっとそうだよ。人助けをしたことを自分から言わないところが、霧島さんらしいよね」

 隣に居た田川は「確かに」と同感した。結は目立つことが嫌いなことを知っているが、謙虚なところも霧島さんのいいところだ、とふと思ったのだった。

(本当にすごいよ、霧島さんは)

 鳥山は改めて、心の中で京川を助けた結を賞賛した。

 

「―!?」

 二組の入り口のすぐ側で、結は小さなくしゃみをするところを両手で抑えた。

 慌てて抑えたので、気づかれていないはず。そう思いながらも結はそっと教室の様子を伺った。

 京川は引き続き数名の同級生達と話をしている。ぎこちなくだが、自分の気持ちを話そうとしていた。 

 作高は、自席で不貞腐れたままだ。なぜかスマホを持ってなかったので、頬杖をついて教室の中を見回している。

 結がここに居た理由は、京川の様子を見に来たからだ。昼休みにしたのは、京川の周りが落ち着くのを待っていたからだ。

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