第253話 成績を上げる意外な方法 その104

 作高の周りには、誰も居ない。メイクを褒めてくれた同級生は、華がこの教室へ入って来た日から話しかけてくれなくなった。

 そして今日の朝から、同級生達は京川に話しかけている。ボサボサの長い髪だったのに、少し艶が出た髪を明るい色のヘアゴムで一つにまとめていたからだ。

「どうしたのその髪!?昨日より綺麗になっているよ!」

「こ、これは、昨日コンビニで買ってもらった、髪を綺麗にする物をつけたの」

「どこのメーカー?教えて!」

「え、えっと、レシートがあるから」

 学生鞄から地味なデザインの財布を取り出し、開けた後に緊張した手でレシートを取り出す。

「京川さん、勉強していないね」

 朝、教室へ入った時、京川の机の上には、今まで置かれていた問題集とかは一冊もなかった。

 代わりに京川の手には、文庫本があったのだ。内容は、雑学についてだった。

 そして今、数人の女生徒達に、コンビニのレシートを見ながらたどたどしく会話をしている。昨日とは、全然違う光景が鳥山の目に映っていた。

(きっと霧島さんが、京川さんを助けてくれたんだな)

 作高が停学になった原因の事件には、結が関わっていた事は学校側にも話していない。今回は、京川と作高と別の学校の生徒の間だけで起こった事件、という事になっていた。

 それでも鳥山が、京川がもう無理に勉強しなくてもよくなったのは結が関わっている、と確信していた。霧島さんは決して、困っている人を見捨てない、と思っているからだ。  

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