第246話 成績を上げる意外な方法 その97

「ううん…。お母さんのせいじゃないよ」

 倒れそうになっていた京川を助けるためとはいえ、

代わりに成りすまして塾へ行く、と提案したのは酒井

自身だ。費用が浮くからと、と親から命令されたなど、

絶対にない。

「酒井さんは、私を助けるためにやったんです。だか

ら、酒井さんを責めないでください」

「…あの時の私達は、娘を無理やり勉強させるのは当

然だ、と思い込んでいたんです。うちの娘を助けるた

めにした事なので、どうか娘さんをあまり叱らないで

ください」

 京川と、父親が酒井をかばう。京川の母親も、同じ

顔で『その子は悪くない』と頭を下げ始めた。

「…すみません。うちの子のために」

 本来なら厳しく責められてもおかしくないのに、京

川一家はそろって自分の娘をかばったのだ。その気遣

いに酒井の母親は目から涙がにじみ出ていた。

「…お前は、この子が入れ替わって塾へ行っていた事

で脅して、このコンビニの品物を無理やり買わせたん

だぞ!今すぐ謝れ!」

 京川一家からの話が住んだ後、作高の父親は娘へ謝

るように促す。母親も「そうよ!」と作高の背中へ片

手を回したが、

「…えーっ、バイトしてるならお金もってるじゃん?

それに悪い事をしたんだから、口止め料を払うのは当

然でしょ?」

 だが、作高はまだ納得がいっていないようだった。

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