第233話 成績を上げる意外な方法 その84

「親は自分ができなかった事を、子供へ託そうとする場合があります。しかし、子供と親はそれぞれ別の人生を歩むものです。親は子供を自分の思い通りにして

はならない、と私は思っています」

 凛とした結の父親の言葉に、京川の父親は膝をついていた。その言葉によって、自分が間違っていたのに気づいただけでなく、認めたくなったのだ。

 娘に辛い思いをさせていた事。仕事で絶望していたとはいえ、自ら動いて解決しようと思わなかった事に。

「貴方もまた、傷ついて苦しんでいたのです。だからすぐ行動に移せなかった。今からでも遅くはないです」

 責めるどころか、優しい言葉をかけた結の父親へ、京川の父親は涙を流した目で「霧島さん…」と声を出していた。

 ずっと隣に居た京川の母親も、涙を流していた。今まで、夫が苦しんでいたと知らなかったのだ。

「…あなた、ごめんなさい。そんなに苦しんでいたなんて…」

「…いや、お前たちにみっともないところを見せたくなかったんだ。だが、その見栄とプライドのせいで理香子を苦しめてしまった…」

 京川は、父親の変わりように言葉が出なかった。そして父親があんなに勉強させたがっていた理由を知り、父親の弱さも初めて知ったのだ。

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