第232話 成績を上げる意外な方法 その83
「ええっ!?」
結の父親からの提案に、京川の父親は驚く。
「このままでは、貴方の心が壊れてしまいます。それに学歴は誰かを差別するための道具ではありません。自分は周りや世の中に役立つ知識や経験を持っているという、一種の証だと私は思っています」
その言葉を聞いた京川と作高は、結が昨日教室で言っていたことを思い出した。
結は「テストの点数だけで、その人の価値が決まるわけではありません」と言っていたのだ。そして、さらに「勉強は誰かに褒められるためではなく、これから生きる方法を考える力を身に着けるためにするものです」と。
しかも結の父親は「勉強ができる事を、他人を傷つける道具にしてはいけない」と言ったのだ。結がそう言ったのは、父親がこんな考えをもっていたからなんだ、と二人して思ったのだった。
「もし、それでも駄目だった場合、転職をお勧めします。貴方はまだ若いですし、成宮グループなら年齢を関係なく募集しています。どうか、貴方の辛さを、お嬢さんのためだ、とすり替えて押し付けないでください」
その結の父親からの言葉は、京川の父親の心に届いた。
今やっと気づいたのだ。娘のためだ、と言いながら、実は学歴がないからと、仕事で辛い思いをし続けていた事で鬱屈した感情を、娘へ無理やり勉強させる事で晴らそうとしていたのだ、と。
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