第231話 成績を上げる意外な方法 その82
「…お父さん」
京川は、初めて見る父親の姿に戸惑った。いつ勉強を強制してきた父が、こんなに悲痛な声を出すなど思ってもいなかったからだ。
「…辛い思いをされてきたのですね」
大人が見せた辛い姿に、結の父親は寄り添い始める。同じ社会人として、パワハラを受け続けた京川の父親の辛さを静かに受け止めようとした。
「私は、貴方の仕事を高く評価しています。最近の担当の社員達は、どこか傲慢なところがあると感じていましたが、どうやら高学歴だからと鼻にかけていたようですね」
結の父親は仕事でも、学歴ではなく人柄を見て判断する。おそらく、上司に贔屓され続けたことでその社員は『自分は優秀だ』と思いあがってしまったのだろう。
「だが貴方は真面目で、愚直で真摯な態度で、我が社と取引してくれていました。そんな貴方が理不尽な目に遭っていたとは…」
今はプライベート中とはいえ、こんな話を聞いてしまったら見逃すわけにはいかない。結の父親は考え込むと、京川の父親へこう聞いてきた。
「この事は、社長に話されました?」
「…いえ、上司から『下っ端のお前の話など耳を貸さない』と言われ続けていましたので…」
「いえ、社長にはすべての従業員の話へ耳を傾ける義務があると思います。まずは、社長へすべてお話ししてください」
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