第230話 成績を上げる意外な方法 その81

「…もしかしたら、京川さんのお父さんのお仕事と関係があるかもしれません」

 結からの呟きに、結の父親は「どういうことだい?」と聞いてみる。

「先ほど、京川さんのお父さんは『…周りの大卒の連中ばかりが、いい仕事を与えられているからだ』とおっしゃっていました。京川さんへ勉強させるのは、い

い大学を卒業しておけば、仕事で理不尽な思いをしなくてすむ。そう思われたからではないですか?」

 その言葉に、京川の父親は息をのむ。結の推測がそう間違っていなかったからだ。

「…急に担当を変わられたのは、もしかしてそれと関係があるのですか?」

 冷静ながら、微かに相手を気遣う気持ちを潜ませてきた結の父親からの質問に、京川の父親はうなだれながら、声を絞り出すように答えた。

「…五年前、新しい上司が来た後に、私は高卒だからという理由で、急に担当を外されてしまったのです」

「それは初耳です。私は、貴方が後輩へ経験を積ませるために譲った、と聞かされていました」

「いいえ!私はこの仕事に責任を持ってやってきました!だが、それからは何かと『高卒』という理由で雑用ばかり押し付けられ、ついには、最近の売り上げが

悪いのは、私が足を引っ張っているからだ!と皆の前で叱咤されたのです!!」

 悲痛と、悔しさが混ざった叫びが、休憩室に響いた。

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