第225話 成績を上げる意外な方法 その76

「…大卒の人達が、仕事でいい思いをしている。貴方はそう思われているのですね?」

 塾長は冷静なまま、京川の父親へそう聞いた。

「…アンタには関係ないだろ!塾をサボったというのに、怒るどころか庇うとは!」

 常識が通じない!と言わんばかりに、京川の父親は怒鳴る。京川が怯えて震えると、結が静かに寄り添った。

「あの、店長。お客様が呼んでいます」

 結達が話をしている時に来た、男子大学生のバイトが休憩室のドアから顔を覗かせながら言った。

「すみません、ちょっと席を外します」

 レジへと向かった店長は、そこで何やら話をし始めた。客からのクレーム対応ではない、と知った後、店長は驚いた顔で、そのお客様を案内し始めたのだ。

「…すみませんが、話をしたいという方が来たので、ご一緒にしてもよろしいでしょうか?」

 休憩室へ戻ってきた店長は、ドアを開けながらそう話し始めた。

「…ようやく来たか」

 京川の父親は、酒井を見ながらそう呟く。

 ようやく、非常識な行いをしたこいつの親へ苦情を入れられる。そう思いながら、店長に続いて入ってきた人物を見て瞬間、

「―き、霧島さん!?」

 文句を言いたくなるほどの苛立ちが、驚きの叫び声と共に頭から出て行ったのだ。

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