第224話 成績を上げる意外な方法 その75

「…そ、そんな、大げさな」

 塾長が『虐待としていると、児童相談所へ通報する』と宣言したのと聞いた京川の父親は顔色を悪くする。

「本当です」

 きっぱり言い切った塾長の目が本気だ、と気づいた京川の父親は、脂汗を掻き始めた。

「なぜ貴方方は、そこまで無理に京川さんを勉強させたいのですか?」

 何も言えなくなってきた京川の両親へ、塾長は急にこう質問してきた。

「…そ、それはいい大学に行けば、いい会社に入れて

仕事には困らなくなるから…」

 塾長の毅然とした態度に圧倒されながらも、京川の父親は答える。

「そのような理由でしたか」

 父親からの答えを、塾長は冷静に聞いていた。

「…そうだったんだ」

 京川の隣で、酒井が呟く。そんな理由で勉強させられていたと知って『京川さんは大変だったんだ…』と思った。

「では、どうしてそう思うのですか?」

「―!?」

 さらにそう聞かれ、京川の父親は動揺した。

「…周りの大卒の連中ばかりが、いい仕事を与えられているからだ」

 苦々しい顔で、京川の父親は吐き捨てるように言った。 

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