「…本当に、ですか？」

　京川だけでなく、酒井も思わず聞いてしまった。

「ええ。やり方はあまり良くない方法でしたが、貴女が京川さんを助けるためにはこれしかない、と判断してしまったからでしょう。それに、このままだと本当に京川さんが倒れて入院…、という事態になっていたかもしれません」

　やり方は間違っていたが、京川を助けるためにはこれしかなかった。塾長は正しさで責めるのではなく、京川の心と体を助けたいという酒井の気持ちを認めたのだ。

「入院だなんて…、大げさな」

「いえ、大げさではありません。教師時代の頃から、ずっと無理して勉強し続けた結果、心まで壊れてしまった生徒を何人も見てきました。京川さんがうちの塾の生徒である以上、見過ごすわけにはいきません」

　娘が疲れ果てている事を認めようとしない京川の父親へ、塾長はさらにそう宣言した。

「生徒って、京川は行ってないじゃん！」

　作高は、塾長が言っている事は間違っている、と言わんばかりに指摘する。

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