「お嬢さんが塾の前で倒れそうになった事は、外の警備カメラで知っています。その時、通りかかったそちらのお嬢さんが、すぐに助けてくれた事も」

　職員が声をかけようして塾の外に出たら、すでに姿が見えなくなっていた。塾の前に居たというのなら、もしかしたらまた来るのでは…と思い、しばらく様子を見る事となったのだ。

「その後、新たに入ってきた生徒を注意深く見ていましたが、先ほど霧島さんからすべての事情を知らされた事ですべて分かりました。助けてくれた酒井さんが、京川さんの代わりに塾へ来ていた事も」

「…本当に、愚かな娘で！」

　塾通いを他人に代わってもらった事を、京川の父親は『本当に恥ずべき事だ』と考えていた。

「いえ、うちの塾は生徒達の心と体の健康を最優先しています。疲れた状態で勉強しても、まったく身に付きませんから」

「…え！」

　学習塾の塾長から、さらに予想外な事を言われた京川の父親は絶句していた。

「もし疲れた状態で塾に来たら、まず塾の中の保健室で休ませますよ。それでも回復がしなかったら、近くの医院で見てもらいます」

　塾なのに、保健室まであるなんて…。結以外、学遊塾の設備のあまりの良さに言葉が出なかった。

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