第210話 成績を上げる意外な方法 その61

「それで昨日、酒井さんにコスメを全種類買わせようとしたのですね」

 もしあのコスメを全種類揃えようとしたら、八千円もする。さすがに大人から見ても「高い」と判断されたようだ。

「バイトすれば、数万円は手に入るでしょ!こっちは親から『勉強に集中させるためだ』って、バイトは禁止されてんのよ!」

 お小遣いは貰っているが、町で遊んでいたらすぐに無くなってしまう。それで作高は、アルバイトをしている酒井からお金を借りようと考えたのだ。

「酒井さんがアルバイトをしているのは、生活に必要なお金を手に入れるためです。そんな大事なお金を無理やり奪い取ることは、やってはいけない事です」

 さすがに呆れそうになった結は、作高へはっきりと注意した。

「うっさいわね!それにこいつらは塾をサボっただけでなく、別人が成りすまして代わりに行ってたのよ!もし、それがバレたら、そいつらもただじゃすまないよね!?」

 作高に脅されても、酒井がすぐ相談できなかった理由は『京川のフリをして勝手に塾へ行っていた』事をバラされたくなかったからだ。それが京川の親に知られてしまったら、京川が辛い思いをしてしまう。

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